タクシー業界には、一般には聞き慣れない独特の隠語が数多く存在します。今回は、その意味と由来について解説します。タクシーの現場を垣間見ることができますよ。
なぜタクシー業界には隠語が多いの?
タクシーの現場では、なぜこれほど多くの隠語が使われるのでしょうか。その背景には、業務上の必要性や法的な事情が深く関わっています。
プライバシー保護とお客様への配慮
タクシーの無線交信は、車内にいるお客様の耳にも届いてしまいます。そのため、乗客に関する情報をそのままの言葉で伝えることは、プライバシーの侵害につながったり、不快な思いをさせてしまったりする恐れがあります。
隠語を使うことで、お客様への配慮を保ちながらスムーズに情報を共有できるというわけです。
電波法違反を防ぐため
タクシー業務で使用される無線は、配車や運行管理を目的として国に認可されたものです。そのため、業務と直接関係のない内容を無線でやり取りすることは、電波法に抵触する可能性があります。
こうした法的制約から、必要な情報をいかに簡潔・的確に伝えるかが重要になりました。隠語はその手段として自然と発達してきたものであり、業界の知恵とも言えます。
知っていると面白い!タクシー業界の隠語一覧
ここからは、実際にタクシー現場で使われている隠語を分野別に紹介します。
お客様・売上に関する隠語
おばけ:思いもよらない場所や時間帯に現れ、長距離を利用してくれるありがたいお客様のことです。「幽霊」のように突然現れることが名前の由来とされています。
ゾンビ:タクシーがなかなか捕まらない混雑時(連休前の深夜など)に、道端で手を挙げてひたすら待ち続けているお客様の姿を指します。やや疲れた様子でふらふらしている姿がゾンビを連想させるようです。
ロング/万収(まんしゅう):長距離移動のお客様を「ロング」、乗車料金が1万円を超える移動を「万収」と呼びます。ドライバーにとって嬉しい案件を表す言葉です。
てんぷら:定員である4人で乗車したのに、1,000円以内で全員降りてしまうケースのことです。見た目は豪華でも中身が少ない「天ぷら」にたとえた皮肉の込もった表現です。
事件・警察・取り締まりに関する隠語
大きな忘れ物:大きな事件を起こして逃走中の犯人や、車内で不審な言動をする人物を指します。警察から情報提供があった際や、ドライバーが危険を知らせるSOSサインとして無線で使われます。直接「犯人」と言わないことで、車内の乗客に気取られないようにする工夫です。
工事中:警察による交通取り締まりや飲酒運転の検問が行われている状態を意味します。ドライバー同士がお互いに注意を促すために使われます。なお、本当の道路工事は「本工事(ほんこうじ)」と区別して呼ばれます。
日常業務・その他の隠語
わかめ:「回送(かいそう)」を意味する隠語です。「かいそう」と「海藻(かいそう)」をかけたダジャレが由来で、海藻といえばわかめ、というわかりやすい連想から生まれました。
エントツ:お客様を乗せているにもかかわらず、メーターを「空車」の状態にして料金を着服する不正行為のことです。かつてのメーター機器の形状が煙突(エントツ)に似ていたことが名前の由来とされており、業界では厳しく禁じられている行為です。



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